Part.4

最南端の鐵路

最南端を目指す車窓

Trip Date : 2017.08.26~27

Write Date : 2018.07.09

2017.08.26

 偶然を装って鉢合わせした現部長氏とは別れて、ゲリラ豪雨の下レンタカーの返却の為に熊本へと走らせた。大雨警報とか出ていた気がするがきっと気の所為だろう。途中変な農道を走らされつつも無事時間内に熊本駅前で返却完了。海浦の俯瞰でED76を撮りたいのも山々だったが、天気がゴミクズなので熊本市電でも乗り潰すこととしよう。夜食を買い込んでおき、熊本市電を健軍町まで乗りつぶした。その辺りで良い頃合いになったので、貸切列車の集合地となっている肥後高田まで移動。その後貸し切り列車に乗ったようだが、ババ抜きと集合写真を撮った記憶しか無い。起きたら列車から降ろされていた。

 後続の電車で一駅移動し、川内からは待ちに待った415系だ!鹿児島地区の415は運用が少なく、割と希少価値が高い。適当にスナップ写真を撮ったり、熊本で勝ったDSLiteのピクトチャットで遊んだりして鹿児島までの一時を過ごした。

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2017.08.26 16:48 鹿児島本線:隈之城付近 (Canon7DmarkⅡ EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM ISO-100)

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2017.08.26 17:58 鹿児島本線:鹿児島駅 (Canon7DmarkⅡ EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM ISO-500)

 楽しいひと時はあっという間に終わり、鹿児島駅で雄大な桜島のお出迎えである。とはいっても、これからそこへ行くのだが。市営の桜島フェリーに乗船し、アド損でユースなホステルで一夜を明かした。九州に居た割にはあまり価値の無い日だった。やはり昼間に移動してはならないのだ。

2017.08.27

 さて、いそいそと早起きしてアド損施設を抜け出し、フェリーに乗って日豊運用の415でも撮りに行こうか。重富駅で下車し、思川橋梁北側で待つ。が、中々雲が抜けきらずボツ。朝から幸先が悪い。

 この後の行程はかなりギリギリである。この後、西方の海バックで撮ろうという魂胆であったが列車の接続が非常に悪い。重富で普電を待っていては絶対に間に合わない。ということで重富駅前から見繕っていたバスで鹿児島まで移動し、鹿児島~鹿児島中央を特急課金して無理やり間に合わせた。かなーりギリギリであったが、なんとか間に合った。優雅に川内に向かうが…この日は日曜日。しかもよりによって財布の中がすっからかんである。西方駅前に郵便局があるが、日曜日なのでATMも空いていない。その上車内で必死に計算したところ、どうやら西方往復する運賃は持ち合わせて居ないようである。これは流石にまずい…貨物を捨てるか?そんな選択肢は持ち合わせていない。川内駅5分乗り換えのタイミングで駅外のATMにダッシュしなんとか列車に駆け込んだ。あぶねぇ~。

 猛烈に汗を掻いた。まぁこういうハプニングも旅先では憑き物だろう。当時の部長氏と合流し、ガンガンに冷房の効いた肥薩おれんじの車内で優雅にダレる。所要時間約20分。あっという間に着いてしまった。ここからは猛烈な南国の太陽が照りつける。汗が止まらない。

 猛暑の中、路肩を歩くこと15分。写真で見た風景そのものが写し出されていた。コバルトブルーの海をバックに走る鉄路。そう、これが西方のお立ち台である!天草まで見えるとは運が良い。さぁ、あとは貨物を待つだけ!だがしかし、そうは問屋が卸さない。

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2017.08.27 11:36 肥薩おれんじ鉄道線:薩摩大川~西方 (Canon7DmarkⅡ EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM ISO-400)

 こういう時に限ってやってくる次位空コキである。色々ハプニングがあった割には良い戦果だったと割り切るべきなのだろうか。いや、これでは満足できないのが正直なところである。もう少し日が回る夏至前後にでも再チャレンジしたいものだ。

 この後もあまり時間が無い。次の列車に乗れなければ行程崩壊だ。歩いて15分ちょっとのところを14分程度で移動しなければ間に合わない。小走りになりつつ向かって、ギリギリ間に合った。再び涼みタイム。

 当時の部長氏とはここで分かれ、いよいよ私は最南端の鉄路を目指すこととした。鹿児島本線で来た道をもどり、伊集院で下車した。伊集院から枕空きを結んでいた「南薩鉄道」の跡を通るバスに乗るのだ。13時15分発の枕崎行きバスに乗り、ゆらゆら揺られて15時に到着した。バス停から歩いてすぐのところにある枕崎駅に向かうと…おっ…既にいるではないか!

 

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2017.08.27 15:02 指宿枕崎線:枕崎駅 (Canon7DmarkⅡ EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM ISO-100)

 JR線の南側の最果ての駅と言っても過言ではないだろう。半年前に行った稚内駅から続く日本の鉄路の南端。その距離3000kmということを考慮するとやはり意外と広いんだな、と痛感させられる。

 さて、発車時刻までまだ一時間以上余裕がある。どうせ座って涼んでいるのもつまらないし、折角の貸し切りできるキハ40の車内である。堪能させてもらおうではないか。

2017.08.27 15:05頃 指宿枕崎線:枕崎駅 (Canon7DmarkⅡ EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM ISO-100)

 国鉄継承の青色モケットでは無いものの、色を変えただけといっても過言ではない茶色モケットである。貸し切りなので窓も気にせず空けて車内に落ちる影に変化を付ける。おっ、ええ感じええ感じ。色々な角度で撮影する。こういう時広角側レンズがあればもっとバリエーションが増えるのになあ…と思ってしまうが、無い袖は振れない。工夫を凝らしてローカル線感を出していこう。

 満足した頃合いで一般客が乗ってきたので撮影は切り上げ。無人駅なので特にすることも無く、座ってぐったりしていた。どこからか休んでいたであろう運転士がやってきた。調べたところ、どうやら折り返しに1時間半マージンがあるらしい。こりゃどっか行って休む訳だわ。

 16時3分、列車は鹿児島へ向け始動した。このまま終点まで乗っていっても鹿児島に着くのは19時前らしい。所要時間約3時間とは…恐れ入った。列車は海沿いの高台に沿って走っていく。森の中を抜けたと思ったら海へと注ぐ川を跨ぎ、そして森に入る。森を抜けたら畑が広がる…その繰り返し。だが、これが私の思うローカル線像にぴったり当てはまっていた。他の地域よりも緑が濃く、かと思ったら時たま海が覗ける。おまけに独立峰・開聞岳が堂々とそびえ立つ。本土の果ての果てに、こんな素晴らしい路線があるとは!

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2017.08.27 16:21 指宿枕崎線:松ヶ浦付近 (Canon7DmarkⅡ EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM ISO-100)

 鉄道旅行を始めた中学生の時を思い出す。あの頃はこんな感じで純粋に車窓を楽しんでいたんだな、と。この気持ちを忘れなければ、ずっと乗り鉄は続けていけるのだろう。その想いを込めて、狭い窓の隙間から撮った。

 さてさて、間もなく目的地である。中々行程を組むのには苦労したが、どうにか徒歩鉄でもこの路線で撮影できそうである。目指すは頴娃近くの鉄橋。一目惚れした撮影地である。頴娃の駅の下見を兼ねて下車し、歩くこと20分。目的地に辿り着いた。蚊が少々うざいが、まぁどうってことない。だが、どうやら雲行きが怪しい。

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2017.08.27 17:45 指宿枕崎線:頴娃~西頴娃 (Canon7DmarkⅡ EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM ISO-500)

 通過15分前にずっと晴れていたところから急に雲に隠れてしまった。もう駄目なのか?先程まであれだけ晴れていたのに…日頃の行いが悪かったか。そう思い苦しんだ。しかし、逆転劇は起こった。通過数分前に光線が若干ながらも回復。列車にギラギラと斜光が照りつけた。良きかな、ありがとう太陽!最南端の撮影地で、小さく雄叫びを上げた。

 これで夕方の撮影は終了。だが、頴娃の駅に戻ってからもう1枚撮れそうだ。先程下見した時、頴娃の駅と背景の開聞岳の位置がベストマッチしていた。これはどうにか絡めて撮れないか?日は暮れ、夜の帳が落ちる。そんな黄昏時に枕崎行きの列車が近づいてきた。これはイケる!

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2017.08.27 17:45 指宿枕崎線:頴娃~西頴娃 (Canon7DmarkⅡ EF-S18-135mm F3.5-5.6 IS STM ISO-160)

 背景に聳える開聞岳と、待つ人が居ない小駅、遠くより近づく汽車…それを包み込むブルーモーメント。今考えればもう少し引いて撮りたかったと思ってしまうのは人間の性なのだろうか。美しき日本の原風景であるのには違いない。

 指宿枕崎線は偉大である。最南端の鐵路がこの半日で与えてくれたモノはとても大きい。今後の鉄道人生に深く関わってくるであろうこの名高きローカル線の存在をしっかりと刻みつけ、10分後にやってきた鹿児島方面の普通列車でこの路線を後にした。