185系「踊り子16号」

　泣いても笑っても、この日が185系による特急「踊り子」定期運行ラストラン。厨房時代から慣れ親しんできた"緑ストライプ"との訣別の日がやってきた。

　朝10時。勤務終わりの足で都区内パスを購入。日曜～月曜にかけて伊豆方面の葬式は済ませたので、残るは都区内でのお見送りのみ。ラストランとはいえどもただの平日。そこまで踊り子の本数自体が多くないので、一本一本を大切にしながら見送った。その合間合間にふと思い出すのが、緑ストライプに熱中した日々。盛夏灼熱の中登った根府川の山、荒れ狂う伊豆の波、暗闇を切り裂く4灯ヘッドライト――やはり、この緑ストライプは青春と共にあったように思う。

　そして定期「踊り子」ラストランは上りの東京18時着便。東京駅で出迎えるのも良かったが、回送幕では話にならない。安牌を取って一つ手前の新橋駅で見送ることにした。通過時刻が迫るにつれ、ラッシュアワーの新橋駅にポツポツと同業が現れ始める。さてそろそろかな、と考えていると、手動アナウンスが流れた。『185系"踊り子"の最終列車、まもなく通過です――』　けたたましい音を響かせ、堂々たるHMを掲げて、人溢れる大都会のプラットフォームを駆け抜ける。『これにて185系による"踊り子"号の運転は終了しました――』　駅構内に響くアナウンス。もうこの姿を二度と見れないと思うと……無性に悔しくて仕方なかった。