No.077

キハ40系磐越西線:川吉俯瞰

Filming Date : 2019.11.17

Writing Date : 2020.02.28

2019.11.17 14:58 磐越西線:喜多方~山都(Canon5DmarkⅣ EF300mm F4L IS USM ISO-250)

撮影日誌

 朝の719を迎撃してからは、裏磐梯を抜けて会津地方を駆け回った。朝方は只見の一橋、昼はばんえつ物語を追っかけてチマチマと戦果を稼いでいく。だが、まだこの時点でまともな紅葉カットを撮れていないことに気がつく。これは由々しき事態だ、何が何でも会津キハの紅葉カットを抑えねば。いざ川吉集落へ車を転がした。

 川吉の紅葉は実に美しかった。今まで見てきた紅葉(笑)とは比べ物にならない、燃える赤色に染まっていた。できれば川吉のS字カーブを俯瞰する撮影地に登りたい。だが、まもなく若松行きのキハが来る時間である。撮影地の場所もわからないのに、そんな時間は無さそうだ。断念して線路際で迎撃した。

 というわけで取り敢えず紅葉カットを抑えることはできたが、正直イマイチな出来。これで撤退して719系山形線なり只見線を狙うか、それとも……?

 悩みに悩んだ。出した結論は、「俯瞰に登る」だった。そうなればなんとしてでも見つけてやろう……所持している情報を元に探索を開始する。丸木橋まではすんなり行けたが対岸に渡った途端、混迷を窮めた。前日晩に降った雨の影響で、ぬかるみが多く点在。更に背丈以上の藪が自然の迷路を形成していた。初手に選んだ道は、どう考えても目的地から外れたルート。更に水たまりに足を突っ込んでパーティー全員が水没。そんなザマで探したものの、撮影地は全く見つからない。これは撤退不可避か……?暗雲が立ち込めていた。

 「最後にここだけ行こう!」 私はまだ行っていない気がする分岐を発見した。藪に隠れており最初通り過ぎていたが、よく見るとルートがありそうである。突き進むしか無い!湿地帯を抜けて、濡れた急斜面を低木頼りで登って、強風吹き荒れるむき出しの獣道を突き進む。すると、木々の間に妙に開けた場所があるではないか。そう、なんとしてでも行きたかったあの撮影地ではないか……

 望遠でブチ抜くと、絶妙な角度で差し込む斜光線が紅葉をくっきりと浮かび上がらせていた。次に来るキハは会津若松から折り返してくる後追いであるが、むしろ好都合ではないか。新津キハが最期の秋を駆け抜けていく、その後ろ姿を見送る。とてもいいシチュエーションじゃないか。最高の舞台を写し取るが故、自ずとシャッターを切る手が震える。汽笛一声、新津行きのキハがS字カーブを駆け抜けていった。

 去りゆく者を止めることは出来ない、ただ我々は線路端で見送ることしかできない……そういう一枚になったと、個人的には思う。最期の季節を駆け抜けるヨンマルに惚れた瞬間だった。