“憧れ”の撮影地というものを巡る旅。ある程度自由にお金が使えるようになった今、その憧れを巡る旅をしている……そんな気がする。中高生の頃はヨンパゴ北越の鯨波だとか、いなほの鳥海山バックといったお立ち台が憧れだった。その後国鉄特急形の衰退と共に、憧れはヨンマルの走る鉄路へと移っていった。田子倉やサンタマ、塩見崎等……余りにも魅力的な絵面の撮影地を追いかけて、日本全国を駆けずり回っている。
この東北遠征の主軸となりうる存在、そして絶対に勝ちたかったのがプリン山俯瞰であった。電波塔から田んぼの中を一直線に駆け抜ける、その絵面の虜になってしまったのだ。田んぼも黄金色へと変わりつつある季節。画角的に絶対必須であった300単焦点も安く仕入れた。そう、“憧れ”を叶える条件は揃ったのである!
新規導入した300単はこの遠征で初めて持ち出したわけだが、初日の羽越は使う機会に恵まれず。2日目も画角が中々合わず、あれよあれよとプリン山俯瞰へと挑むことになった。南側の登山口から背ほどの藪を掻き分け、汗だくになりながら登ること15分。その山頂に広がる世界は絶景であった。左を見れば憧れの田んぼ一直線、右を見れば遠く男鹿半島まで伸びる海岸線。憧れの撮影地に立てた喜びに浸る暇もつかの間、セッティングへと移った。
東八森の駅へと白キハが滑り込んできた。1つ目の田んぼアングルは、新規導入した300単で美味しいところを撃ち抜くのだ。ゆっくりと駅から走り出したヨンマルを、低速連写で確実に押さえていく。色付く田んぼに長い影を落として突き進む姿に惚れていると、まもなく森の陰へとフェードアウトした。さぁ、次はビッグに日本海を取り入れて撮ろうではないか。猶予は次のS字カーブからヨンマルが飛び出してくるまで。着実にレンズを交換し、三脚を付け替えて、PLフィルターの角度を調整する。よし、間に合った!透き通る穏やかなマリンブルーの海、米代川の造り出したどこまでも続きそうな白い砂浜、その脇をコトコトを駆けるヨンマル。あまりにも偉大な絶景に対して、唱える言葉はただ一つ。「激Vッ!」