185系の表の顔、つまり花形運用が踊り子だとすれば、裏の顔は湘南ライナーである。ただ黙々と湘南地域と都内を輸送し続けて既に30年。国鉄最後のダイヤ改正の際に設定されて以降、増発を繰り返しながら運行を継続してきた。他の首都圏を走るホームライナーが徐々に特急格上げや廃止の道を辿る中、運行形態を殆ど変えずに存続している湘南ライナーはまさに国鉄時代の"残照"である。
そんな湘南ライナーは通勤ラッシュ時間帯、つまり朝方と夕方に運行しており前者は編成撮りや富士山と絡めて風景ショットがよく上がってくる。だが一方で日暮れ後に運行が開始される夕方下りの湘南ライナーは時間帯が時間帯なので、あまり撮影されることは多くない。しかし、私は敢えてこの列車を狙うことにした。というのも、上り列車では各停車駅毎に少しづつ乗客を載せていくが、下り列車は東京駅と品川駅で一気に満席にしてから各停車駅毎に降ろしていく。その為、東京駅での行列形成は凄まじいものであるのでは?という想像に至ったためである。この光景を如何に写真で表現していくか…胸を昂ぶらせながら東京駅へと降り立った。
終着となる踊り子をスナップしてから、湘南ライナーの発車する9番ホームへと移動する。予想通りといえばそうなのだが、湘南ライナーの待機列はおよそ百数メートルにも連なっており、更に列は伸び続けていた。その光景は圧巻たるもので、見惚れているうちにいよいよ湘南ライナーの運用に就く185系が回送で入線してきた。到着後、手早く係員がドアコックで一部の扉だけを開放し乗車を開始。列が進み始め、ライナーの乗客は次々と2つの扉から吸い込まれていく。ある意味滑稽な光景を、様々なアングルから切り取った。今宵もまた、ストライプは地道な運用へと駆け出していく。