Garally.03
日本旅行と西武鉄道・秩父鉄道三社による
特別企画、臨時夜行急行「奥武蔵51号」
その大役に抜擢されたのは、秩父線の主・西武4000系
池袋直通の快速急行が無くなった今、久々の大舞台である
西武4000系を追っかけている身としては逃すわけにいくまい!
根性と気合と、そして自分の感性を信じて追っかけに回った
――いざ、夜の奥武蔵へ
所属の武蔵丘から池袋までの送り込み回送は、昼間のうち行われた
どうせ直前に送り込むだろ、と高を括っていたので写真は無い
が、まあ昼間の写真は今回の趣旨には不要だ
一発分落としたのは痛いが、これから回収していこう
池袋駅に到着し、7番ホーム先端へと足が急く
そこには、既に身支度を整えた4013Fが佇んでいた
"池展"と呼ばれる池袋駅脇の留置線は
夜までひっきりなしに見物人が行き交っていた
彼は今日、一世一代の檜舞台へと躍り出るのだ
一旦引き払って車の支度をしてから、再び池袋駅へと戻った
辺りは既に暗くなり、出発の時が近づいてきているのを感じる
この日、かの列車の前だけで3人の少年たちと話す機会があったが
皆この珍客に興味津々であった
「彼らは純粋に鉄道が好きなのだな」
そう、ひしひしと伝わってきた
「私もあの子たちのように純粋に好きだった頃があっただろうか」
――と、つい思い返される
何も考えずにカメラを向けて楽しんでいた昔
知らない場所、知らない列車を知る楽しみ
今は色々と知りすぎた
あの頃の純心さを取り戻したい……とさえ思ってしまう
まあホームから身を乗り出したり、走ったりするのは頂けなかったが(笑)
20時35分、乗務員の方が現れる
手慣れた様子で運転台へと乗り込み、始業点検が始まった
パンタが上がり、静寂に佇んでいた列車にへと順々に灯りが灯されてゆく
さあ、祭りの始まりだ――
夜行列車は、ターミナル駅を撮らねば話にならない
まず必要なピースを埋めるために、ダイヤゲートへと駆け上がった
21時14分、急行「奥武蔵」51号は定刻通りに池袋駅を出発
足掛け9時間のロングトリップが始まった
豊島園の停車は間に合わないのでパス
荒れたと噂の練馬はスルーし、中村橋に降り立った
絶対に撮りたかったのが複々線区間の闇鉄
以前レッドアロークラシックでも同じチャレンジをしたが
今回ばかりは一発勝負
練習電で設定を練り込み
置きピンをしてシャッターを切り落とす
ケツ撃ちをしてからモニターを眺め
思惑通りに撮れていることを確認
まずは一つ、肩の荷が下りた
続いて清瀬停でスナップ撮影
まだまだ車内は賑やか、といったところだろうか
22時24分、信号が開通し静かに走り去っていった
続いて所沢、西所沢、西武球場前とこまめに停まっていく
今回のダイヤは撮り鉄派にはかなり優しいダイヤである一方で
乗り鉄派には運転停車が多く
実際の運行時間が少なく感じそうなものである
秩父鉄道線内をもう一往復ぐらいして
時間を稼いだほうが良かったのではないか?
……と思わずにはいられない私も居る
西武球場前で表題作を撮影し、西所沢へと舞い戻る
ほろ酔いのサラリーマンですらも流石に
カメラを抱えて闊歩する撮り鉄達の様子が気になるようで
「何が来るんだい?」と聞かれる始末
こういうやり取りをするたび、ネット上の撮り鉄叩きなぞ
気にするだけ無駄だなと感じる次第である
さて、復路の西トコでは新101とすれ違うのはリサーチ済み
だが私は新101赤電カラーの塗り分けが苦手だ
そこで前面をブラして往年の801っぽく見せることにした
本当はツートンが良かったが
2編成とも多摩川線に行ってしまっているのが苦いところ
まあ近江カラーが来るより5000倍マシなので、有難い限りだ
そして飯能まで先行し、入線風景を撮影
新101の並びか飯能駅入線正面撃ちは二択だったが
魅力的だった前者を選ぶことにした
従って後者のカットは撮れずじまいだったが
後日検索を掛けるとドンピシャな景色がアップされていた
自分では撮れなくとも
自分が見たかった風景であることには変わりない
やはり飯能2/3番ホームは
いつでもこの"白い電車"が待っている場所なのだから
このホームは、西武4000系ファンには特別なホームなのです
飯能駅前で支度した車に乗り込み、国道299号を軽快に飛ばした
西武秩父線区間は全スルーし、御花畑駅に乗り込む
通常時に運用している区間で撮る必要はないだろう、と踏んだからだ
普段走らない場所/時間か、HMを強調して撮る
――今回のお題目はこの2点に尽きる
いつもは埋まらないピースを、この機会に全部回収する必要があるのだ
御花畑駅では編成バルブに徹する予定だったが、思いの外条件が悪い
予定を変更し、バックショットで見送ることにした
見どころのなさそうな大野原停車をすっ飛ばし
秩父鉄道でも随一の雰囲気を醸す上長瀞駅へ
この駅を真夜中に運行するというのは非常に貴重な機会だ
とはいっても、以前の平日ダイヤなら毎日のように見れた光景であるが
白い車体が本当にこの駅の雰囲気に合う
まあなんでも似合いそうな駅ではあるが(笑)
停車時間も長めに取られており、駅の北から南まで探索しても有り余った
長瀞駅は1時間停車するものの見どころがあまり無い
16時からの連続稼働で小腹が空いたこともあり
半分を夜食タイムに当て腹ごしらえとした
夜鳴きそばの行列を撮ろうと思ったが
列車と絡められないのならタダの行列に成り下がるので断念
そして列車は三峰口へと折り返す
この辺りは通過風景を主体に撮影を敢行していった
親鼻駅はバックショットをメインに、キーとなるカットを切り落とす
撮りづらい秩父駅はスルー
影森駅では、留置車両と広い構内でターミナル感を演出
白久駅では外から撮影しようと考えていたが
他の駅に掲示されていた立入禁止札が見当たらない
ホームにお邪魔させて頂き、お立ち台カーブでケツ撃ちをキメた
時刻は既に3時半、払暁は近い
夜明けと共に頭が回らなくなりカットは少ない
曇天で武甲山が雲の中ということもあり
撮りたい絵が特段思いつかなかった
だからせめてHMが目立つアングルを、と撮影地をチョイスした
定番・影森登りに、正丸トンネル飛び出し
この二カットがあれば十二分だ
ラストの正丸を撮ってからまもなく
西吾野停でHMが剥がされ、この団臨は終着した
西武の夜行列車の系譜は、特急「こぶし」から始まる
甲武信ヶ岳から命名されたこの列車は短命ではあったが
今もなお、歴史にその名を残している
近年は雲海ブームで頻繁に運行される秩父行き夜行であるが
ここまで本格的な夜行列車の運行は初めてではないだろうか
その晴れ舞台に素晴らしいヘッドマーク、そして一番カッコいい車両
興奮せずには居られない一夜であった
願わくば、再びこのような機会があらんことを
そして次の機会では、乗りに徹したい……そう思わずには居られない
西武4000系の"夜"は、まだ始まったばかりだ――